NVIDIA GTC 2025:AI、ロボティクス、自動運転分野での飛躍 - Journamics

NVIDIA GTC 2025:AI、ロボティクス、自動運転分野での飛躍


NVIDIAは、2025年3月19日に開催されたGTC 2025カンファレンスで、AI、ロボティクス、自動車分野における革新的な製品と戦略を一挙に発表した。AI革命の立役者として知られる同社は、データセンター向けチップで築いた地位を基盤に、デスクトップ、ロボット、自動車産業へと領域を広げている。これらの発表は、技術の進化だけでなく、NVIDIAが目指す「AIがあらゆる産業を変える未来」を具体化するものだ。


汎用ロボティクスの時代到来:Isaac GR00T N1

Nvidiaは、人型ロボットの開発を加速するオープンソースの基盤モデル「Isaac GR00T N1」を発表した。CEOのジェンスン・フアン氏は「汎用ロボティクスの時代が到来した」と力強く語った。
このモデルは、人間の認知を模倣したデュアルシステムを採用している。「システム1」は反射的な高速動作を担い、「システム2」は環境を理解し計画を立てる推論ベースの処理を行う。トレーニングには人間のデモデータとNvidiaのOmniverseで生成した合成データが使われた。

実用例:
1X社のNEO Gammaロボットが、GR00T N1をベースに最小限のデータで自律的な片付け作業を実現した。1X CEOのベルント・ボルニッチは「ロボットを道具から仲間に進化させる」と意気込む。

参考:1X社の公式Xから引用。ただし投稿は2025年2月22日のもの。

背景:
人型ロボットは、Boston DynamicsのAtlasやTeslaのOptimusなど注目を集めてきたが、汎用性と学習能力が課題だった。GR00T N1は、これを解決する基盤として期待される。

開発者支援:
トレーニングデータや評価シナリオはHugging FaceとGitHubで公開され、誰でもカスタマイズ可能だ。製造業や介護など、人間と協働するロボットの可能性を広げることが期待される。


次世代AIスーパーチップ:Blackwell UltraとVera Rubin

Nvidiaは、AI向けGPUの新ロードマップを公開した。Blackwell Ultra GB300が2025年後半、Vera Rubinが2026年後半、Rubin Ultraが2027年後半に登場する予定だ。

Blackwell Ultra GB300:
20ペタフロップスのAI性能と288GBのHBM3eメモリを搭載する。2022年のH100と比べ、FP4推論速度が1.5倍になり、AI推論が劇的に高速化した。例えば、DeepSeek-R1 671BモデルはH100の1.5分から10秒で応答する。

Vera Rubin:
50ペタフロップスで、Blackwell Ultraの3.3倍の性能を誇る。2026年登場予定で、ラック単位での飛躍的な進化が期待される。

Rubin Ultra:
100ペタフロップスと1TBメモリを備え、2027年に登場する。フルラックでは15エクサフロップスの推論性能を提供する。

背景:
NvidiaはAIブームで2024年に1,300億ドルの収益を上げ、データセンター市場を席巻した。しかし、DeepSeekのような低コストモデルの登場で株価が揺らいだ時期もあった。フアンは「需要は昨年想定の100倍だ」と強調し、さらなる性能向上が不可欠だと訴える。


パーソナルAIコンピュータ:DGX SparkとDGX Station

Nvidiaは、個人向けAIスーパーコンピュータ「DGX Spark」と「DGX Station」を発表した。データセンター不要で大規模AIモデルを扱える点が特徴だ。

DGX Spark:
CESで「Digits」として公開された小型モデルが改名された。価格は3,000ドルで、GB10チップが1,000TOPSと128GBメモリを提供する。今夏発売予定だ。

DGX Station:
GB300 Blackwell Ultraを搭載し、20ペタフロップスと784GBメモリを誇る。研究者や学生向けに設計された。

背景:
これまでAI開発は巨大なデータセンターに依存していたが、個人や小規模チームでも高性能計算が可能になる。AMDのStrix Halo(96GB VRAM)やFrameworkの2,000ドルデスクトップが競合として存在する。Asus、Dell、HP、Lenovoなどが製造し、予約はNvidiaのサイトで受付中だ。AI開発の民主化を進め、クリエイターや教育現場に革新をもたらすことが期待される。


プロ向けGPU:RTX Pro 6000 Blackwellシリーズ

プロフェッショナル向けの「RTX Pro Blackwellシリーズ」が登場した。クリエイターやデータサイエンティストのニーズに応える設計だ。

RTX Pro 6000:
96GBのGDDR7メモリと600Wの消費電力を特徴とし、24,064 CUDAコアを搭載する。ゲーム開発やAIワークロードに最適だ。デスクトップ、ラップトップ(最大24GB VRAM)、サーバー版があり、Max-Q技術で電力効率も向上した。

背景:
従来のQuadroブランドを刷新し、RTX Proとして統一された。AMDのStrix Halo(128GB統合メモリ)に対抗し、VRAM需要の急増に応える。ワークステーション版は4月からPNYやDellで、サーバー版はAWSやGoogle Cloudで年内提供される。


GMとの提携:自動運転と製造革新

自動車工場のイメージ。NVIDIA GTC Xアカウントから引用。
GMとの提携が発表された。X(@nvidianewsroom)から引用。

GMはNvidiaと提携し、自動運転技術と製造効率化を強化する。

自動運転:
Drive AGX SoC(1,000TOPS、Blackwellベース)を次世代車両に搭載する。テスラやMobileyeと競合する技術だ。

製造:
Omniverseで仮想組立ラインをシミュレーションし、ロボットの溶接や運搬精度を向上させる。

背景:
GMはSuper Cruiseで成功したが、Cruiseのロボタクシー事業は安全性の問題で資金撤退を余儀なくされた。Nvidiaの技術で巻き返しを図る。Nvidiaの自動車事業は年間50億ドルと小規模だが、マグナやジャガー、トヨタとの提携も進む。カニ副社長は「1兆ドルの市場」と見込む。この提携は、自動車産業におけるAI活用の新たな一歩だ。


量子コンピューティングの展開

Nvidiaは、ボストンに「NVIDIA Accelerated Quantum Research Center(NVAQC)」を設立し、量子コンピューティングの進化を加速する計画を発表した。このセンターは、AIスーパーコンピュータと最先端の量子ハードウェアを統合した「加速量子スーパーコンピューティング」を実現する。

NVAQCでは、量子ビットノイズの抑制や実験的な量子プロセッサの実用化といった課題に取り組む。Quantinuum、Quantum Machines、QuEra Computingなどのリーダー企業や、ハーバード大学(HQI)、MIT(EQuS)といった一流大学と協力し、NvidiaのGB200 NVL72システムとCUDA-Qプラットフォームを活用する。フアン氏は「量子コンピューティングがAIと結びつき、薬剤開発や材料科学のブレークスルーを生む」と強調しており、年内稼働を目指すこの取り組みは、量子技術の実用化を大きく前進させるものだ。


以上のように、今年のGTCも非常多岐にわたる分野で発表があり、Nvidiaの充実ぶりを示すものとなった。
同社はAIチップ市場での圧倒的なシェアを背景に、ロボティクス、個人向けAI、プロ市場、自動車産業へと全方位で展開を加速している。特にGR00T N1やBlackwellシリーズのように、ソフトウェアとハードウェアの両輪を整備し、開発者や企業が新しい価値を生み出す基盤作りを目指す姿勢が目立つ。
競合のAMDやIntelが追随する中、フアン氏の「AIが未来を定義する」というビジョンは、技術とビジネスの両面でますます現実味を増している。