中国の全人代2025閉幕、今年のポイント - Journamics

中国の全人代2025閉幕、今年のポイント

中国の全国人民代表大会(全人代)が2025年3月11日に閉幕した。約2977人の代表が参加した今年の会議では、経済目標や政策の方向性が承認され、中国共産党(CCP)の指導下での国家運営が改めて強調された。ここでは、2025年全人代の主なポイントを振り返る。


経済成長目標と雇用

全人代は、政府工作報告を承認し、2025年のGDP成長率目標を「約5%」と設定した。これは、2024年の実績(5%成長、GDP134.9兆人民元)に続く堅調な目標だ。また、都市部で1200万人の新規雇用創出を目指し、調査失業率を約5.5%に抑える計画も示された。財政赤字は対GDP比約4%とし、4.4兆人民元の地方特別債や1.3兆人民元の超長期特別国債を活用する。

技術革新と緑の開発

会議では、AIや量子技術、6Gなどの新興産業への投資拡大が打ち出された。デジタル経済の付加価値をGDPの約10%に引き上げる目標も掲げられている。さらに、環境対策として、GDP単位当たりのエネルギー消費を約3%削減し、ゼロカーボン工業団地の設立や炭素排出取引の拡大が計画された。

特に、中国といえば先日の「DeepSeek」の衝撃が記憶に新しい。DeepSeekは2025年初頭に高性能モデルを発表し、低コストでChatGPTに匹敵する性能を持つと話題になった。実際、今年の政府工作報告の中でAI関連の内容が大幅に増加しており、「科技(テクノロジー)」という言葉が昨年より回数が増え(26回から29回)、特にAIに関する言及が目立ったとの分析もある(新華社)。

国家安全と外交

国家安全保障の強化が強調され、軍事能力の向上や「一帯一路」プロジェクトの推進が確認された。また、香港・マカオの自治支援や「台湾独立」への反対も明言され、グローバル開発イニシアチブを通じた国際協力が打ち出された。


注目点:記者会見の廃止

今年の全人代では、30年間続いた首相の年次記者会見が取りやめられた。これは情報統制の強化を示唆する動きとして注目を集めている。代わりに、代表が提出した269件の提案が議論され、国家安全保障や高品質発展への関心が反映された。

論争と評価

全人代は憲法上最高権力機関とされるが、約70%の代表がCCPメンバーであり、議論の場ではなく、事後承認の場との批判は根強い。一方で、代表間の議論が増加し、政策に一定の影響を与えているとの見方もある。2025年の会議は、経済回復と国家安全保障を優先するCCPの方針を改めて示した形だ。


以上のように、2025年の全人代は、経済成長と技術革新、国家安全保障を軸に、中国の今後1年の方向性を定めた。記者会見の廃止など新たな動きも見られ、国内外でその影響が注目される。