教育無償化と社会保険料軽減で3党が合意
少数与党である石破政権のもとで、新年度予算案が年度内に成立する見通しとなった。
自民・公明両党と日本維新の会(維新)が、教育無償化の拡充や社会保険料の負担軽減などで正式合意に至り、予算案への賛成を表明したことによる。
少数与党が新年度予算案を審議するのは、1994年(羽田内閣)以来であり、異例の国会運営が焦点となっていた。
予算成立に至った事実
“少数与党”で迎えた通常国会
石破政権は昨年末の衆議院で過半数を割り込み、いわゆる「少数与党」の状態で政権運営を行っている。通常国会では、新年度予算案を成立させるために野党の協力が欠かせない状況だ。
教育無償化・社会保険料引き下げで交渉進展
1月から続いた与野党協議の中で、特に日本維新の会とは「高校の授業料無償化」や「現役世代の社会保険料引き下げ」の実現に向けた政策のすり合わせが集中的に行われた。
維新側が強く主張していた私立高校の加算支援や所得制限の撤廃、医療保険などの効率化を通じた保険料の軽減に対し、政府・与党が譲歩や修正案を提示する形で合意がまとまった。
国民民主・立憲民主の対応
同じ野党でも国民民主党や立憲民主党は、予算修正や別の政策協議でなお溝が残っている。ただ、国民民主党との「年収の壁」の見直しについては、協議を継続する方針が確認され、ひとまず予算案の可決が優先される見通しだ。
一方、最大野党の立憲民主党は「教育無償化のさらなる拡充」や「給食費の無償化、保育士・介護職の待遇改善」などを主張しており、今後の国会審議で改めて協力を求める構えである。
合意のポイント
▼ 高校の授業料無償化の拡充
・ 私立高校の就学支援金の上限額(45万7000円)への引き上げと所得制限の撤廃
・ 2026年度をめどに本格実施
・ 公立高校との格差是正に向けた追加措置
▼ 社会保険料の負担軽減
・ 3党協議体を設置し、医療費適正化や医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進
・ 実現が可能なものは2026年度から段階的に実施
・ 維新が主張していた「現役世代の大幅負担軽減」に向け、医療・介護産業の効率化策などを検討
▼ 年収の壁見直しへの対応
・ 「年収130万円の壁」など働き控えを解消するための企業支援を拡充
・ 2025年度中の実施をめざす
これらの合意内容を予算修正案に盛り込むことで、維新が予算案への賛成を決定し、年度内の成立に道が開かれた。
過去の少数与党政権との比較
1994年(平成6年)羽田内閣
- 社会党の連立離脱で少数与党となり、前政権が提出していた予算案を引き継いだ。
- 野党に回った社会党が最終的に予算に賛成し、6月に成立したものの、羽田内閣は短命で退陣。
- ポイント: 当時も“かつての連立相手”を取り込み、辛くも予算を通した事例である。
1955年(昭和30年)第2次鳩山内閣
- 衆議院選挙で過半数を確保できず、少数与党で発足。
- 減税策など野党の主張を取り入れ、約3か月かけて予算案を修正・成立。
- ポイント: “大幅な譲歩による修正案”で野党の理解を取り付け、可決にこぎつけた例である。
どちらのケースも「少数与党で迎えた新年度予算」の成立には、野党の主張を部分的に取り込み、連携を図ることが鍵となった。今回の石破政権も同様に、維新や公明党との合意を優先させるかたちで、予算成立にめどをつけている。
今後の展望
立憲民主党や国民民主党との追加協議
予算成立後も、給食費のさらなる無償化や「年収の壁」問題など、各党の政策課題は山積している。政権側としては、追加的な修正や財源確保策をどう示し、他党を取り込んでいくかが試金石となる。
夫婦別姓など政策の“火種”
選択的夫婦別姓や政治とカネの問題など、与党内でも意見が分かれるテーマが今後の国会で再燃する見通しだ。少数与党として、石破総理がどのように舵取りを行うかが注目される。
少数与党のため、会期末のタイミングや政局次第では内閣不信任決議案が大きなリスクとして残る。
与野党双方が参議院選挙や地方選挙を見据える中、今後も政治的駆け引きが続く見通しだ。