ふるさと納税に改革:「おトク合戦」から「公共性」へ - Journamics

ふるさと納税に改革:「おトク合戦」から「公共性」へ

ふるさと納税は個人が選択した自治体に寄附すると、一定の上限内で2,000円を超える部分が所得税・住民税から控除される仕組みだ。「一極集中」が進む日本において、税収の地域格差に対する対抗策の一案として開始された。

今回、ふるさと納税は2025年10月1日から新ルールが施行される。仲介ポータルなど「寄附に伴いポイント等を付与する者を通じた募集」を禁止する改正だ。狙いは、寄附の誘因を「ポイントの多寡」から「地域の価値」に戻すことにある。


迷走する「ふるさと納税」制度

これまでもふるさと納税には度々「改革」がなされてきた。2019年、返礼品競争が加速する中、政府は「返礼品は地場産品・寄附額の3割以下」という枠を明文化した。ふるさと納税を制度の趣旨に沿って運用するための土台づくりである。

それでも過熱は収まらず、2023年には「募集に要する経費は寄附額の5割以下」というルールが厳格化された。受領証発行やワンストップ事務など“周辺コスト”も5割枠に含める運用が示された点が大きい。


2025年の改革、「ポイント禁止」の狙い

2025年10月1日から、仲介ポータルなど「寄附に伴いポイント等を付与する者を通じた募集」を禁止するルールが適用される。ここで言う“ポイント”は、サイトや連携施策が寄附行為とセットで上乗せするインセンティブのことだ。返礼品の還元率を法の外側で補う設計が横行した結果、寄附が“ショッピング化”し、自治体側も「サイト手数料や広告で集客→返礼の原価圧縮」という循環に陥った。

ポイント禁止は、この循環の結節点を断つ規制である。なお、クレジットカード決済に伴う通常ポイントやマイルは対象外で、付与は継続される。


自治体と寄付者への影響は?

自治体は、寄附獲得の指標を「ポイント倍率」から「プロジェクトの公共性」「地域への波及効果」へ切り替える必要がある。2019年の地場産品基準と2023年の経費5割枠に、2025年のポイント禁止が重なることで、制度運用はより一本筋が通る。条文と通知を踏まえれば、違反が続けば指定取消しのリスクも現実的だ。

寄附者にとっては、サイト横断の“お得”比較が効きにくくなる一方、控除の仕組み自体は変わらない。5自治体以内ならワンストップ特例が使えるし、確定申告をすれば控除は適用される。ワンストップの申請後に確定申告を行うと特例は無効になる点も含め、国税庁の案内で手順を確認しておきたい。紙申請の締切は多くの自治体で翌年1月10日必着と運用されている。


“おトク合戦”の先にあるもの

今回の規制は、寄附者の損得を狭義に削るためのものではない。制度の原点である「地域を選んで支える」という公共性を取り戻し、自治体が説明責任と創意工夫で寄附を集める土俵に戻す取り組みだ。

ふるさと納税は「地方交付税」が果たしてきた公式の平準化に「寄附という選好」を上乗せする二層構造で、そもそもその存在が「不平等な仕組み」との批判もなされてきた。都市部においては、その税収減少の影響は大きい。東京23区区長会によると、2024年度の東京特別区における住民税の減収額は、特別区全体で約930億円に達し、特別区民税の10%に迫った。平成27年度からの累計減収額は4,500億円超に上る。

このように都市の歳入に与える負荷は甚大で、だからこそ“お得合戦”から公共性へと運用の舵を切る必要がある。目先の「売上」を稼ぐ競争から、地域の価値提案そのものを磨く競争へ。ふるさと納税は次のステージに入れるのか、注目に値する。