iPhone Airはイノベーションか?ーAppleイベントを振り返る - Journamics

iPhone Airはイノベーションか?ーAppleイベントを振り返る

米国時間2025年9月9日、Appleは本社のApple Park(米カリフォルニア州)で年次イベントを開催した。新型のiPhone 17/17 Pro/17 Pro Maxに加え、iPhone Air、Apple Watch Series 11、AirPods Pro 3を発表した。

※ 記事タイトル画像はApple公式サイトから引用


“iPhone Air”登場

最も注目に値するのは「iPhone Air」の登場だ。

iPhone Airは厚さ5.6mmの最薄iPhone。6.5インチのProMotionディスプレイとチタン筐体を採用し、内部は背面上部の「プラトー」に主要部品を集約し、下側をバッテリー空間として確保する新レイアウト。薄型MagSafeバッテリーも用意され、併用時は動画再生最大40時間相当をうたう。

同社の「Air」ブランドは、ノートPCの「MacBook Air」やタブレットの「iPad Air」で先行してきた。いずれも軽量・薄型・携帯性を訴求しており、今回スマートフォンに「Air」を冠したのは、iPhoneでも“薄型クラス”を常設する方針の宣言と受け取れる。対になる「Pro」は、重量やサイズをある程度許容しつつ性能・持続性を追求する路線がより明確になった。

また大きな方針転換はeSIM専用であることだ。物理SIMトレイを廃して体積を回収し、薄型化に振る判断が仕様にまで徹底されている。一方で排熱効率と容量のトレードオフは避けがたく、アクセサリー運用(外付けバッテリー)込みで体験を成立させるのが実像だ。販売地域は広いが、一部地域(eSIM制度の整備が遅い市場)では導入時期が未定、または遅れる見込みとの報道もある。


“布石”としての意味合い

今年のiPhoneは、二つの工学テーマが明確になった。ひとつはAirの体積回収(eSIM化+プラトー集約)による薄型・軽量の常用化。もうひとつはProの熱設計強化による長時間負荷での持続性能だ。iPhone 17 Proはアルミ一体ボディとベイパーチャンバーという踏み込んだ放熱設計を公式に打ち出し、“速い”を長く維持する価値を前面化した。

結果として、Airは「薄さを日常化する」基盤、17 Proは「負荷の持久化」基盤がそれぞれ整った。前者はさらなる体積回収やアクセサリー連携、後者は高発熱ワークロード(長回し撮影、生成処理、ゲーム)の常用化へ。いずれも現実的な「次の一手」の土台と言える。


AIの位置づけとGoogleとの対比

比較軸を明確にするため、同時期の競合も押さえておきたい。

スマートフォンの主戦場はいま、AIをどうOSと端末に組み込むかにある。Appleは今回、Apple Intelligenceを“機能名で前面に出す”よりも、OSとハードの地ならしの上に滲ませる見せ方を選んだ。

対してGoogleのPixel 10はTensor G5×Gemini Nanoで端末内AIを全面運用し、Gemini LiveがCalendar/Keep/Tasks/Mapsまで常時連携する。短期の話題性はPixelが取りやすいが、Appleは放熱・電源・内部レイアウトといった基礎設計を先に固め、将来の常時AIや長時間生成に耐える路面を整えている――この整理が妥当だ。


最後に

成熟市場と言われるスマートフォンでも、評価軸を設計の“土台”に置くと見え方が変わる。薄さを日常化するAir、持久性を制度化するPro。AIの前面化で攻めるPixelと、基礎を磨き上げるApple。いま注目すべきは、この二つの路線がユーザー体験をどう変えていくかだ。