石破政権に危機、高額療養費制度と"10万円"の商品券問題 - Journamics

石破政権に危機、高額療養費制度と”10万円”の商品券問題

石破茂首相が率いる政権が、発足からわずか半年で大きな危機に直面している。高額療養費制度の見直しを巡る混乱に加えて、自民党若手議員への10万円商品券配布問題が明るみとなった。野党の追及が強まる中、新年度予算案の年度内成立や政権の求心力維持に暗雲が垂れ込めている。


高額療養費制度で混乱、首相が陳謝

3月13日、「衆議院」予算委員会で高額療養費制度の見直しを巡る質疑が行われた。通常、新年度予算案は衆院通過後は参院で審議される。しかし今回は、参院での予算審議が進行中にも関わらず、衆院予算委が再招集される異例の事態となった。これは、政府が当初検討していた負担上限額の引き上げを見送り、予算案を修正する方針に転換したためだ。

石破首相は委員会冒頭、経緯を説明し、「新年度予算案が衆議院を通過した後に再度修正することになったのは大変申し訳ない。各党の意見を聴きながら年度内成立に向けて努力する」と理解を求めた。しかし、立憲民主党の野田佳彦代表は「衆院通過から3日後に方針転換とは混乱としか言いようがない。もっと早く患者団体に会うべきだった」と政府の対応の遅さを厳しく批判。これに対し、石破首相は「厚労省からの報告を過信し、患者団体との対話が遅れたのは私の判断ミス」と陳謝し、秋までの制度再検討を約束した。

国民民主党の玉木雄一郎代表も「見直し凍結は評価するが、社会保険料負担軽減の対案がない」と指摘。参院審議中のこのタイミングで衆院が動いたことで、予算案が再び衆院に戻る可能性も浮上し、政権の政策遂行能力に疑問が投げかけられている。


”10万円商品券”で火に油

さらに追い打ちをかけたのが、3月14日に発覚した「商品券問題」だ。石破首相は3月3日、総理公邸で自民党の当選1回議員15人と会食し、その前に各議員の事務所に10万円分の商品券を届けたことを認めた。「私費で用意したお土産代わり」と釈明し、「政治資金規正法や公職選挙法に抵触しない」と主張するが、野党は猛反発。立憲民主党は「政治活動の寄付に該当する可能性が高い」と追及を予告し、日本維新の会の前原誠司共同代表は「一種の買収」と非難した。

与党内でも、公明党の斉藤鉄夫代表が「国民感覚から大きくずれている」と苦言を呈し、自民党の西田昌司参院議員は「予算成立後の退陣が正解」と進退に言及。専門家からは「10万円が高額すぎてお土産とは言えない」との声が上がり、法的問題以前に道義的責任が問われている。なお、15人の議員は全員が「自主的に返却」したという。


動き出す自民党の有力者たち

裏金問題で派閥解散を掲げた岸田政権の後を継いだ石破政権だが、党内融和が課題だった。3月10日には岸田文雄前首相、麻生太郎最高顧問、茂木敏充前幹事長という、党内の有力者が会談したばかり。そして、そのわずか数日後に「商品券問題」が発覚した。3名の有力者たちがこの問題をどこまで把握していたのかは定かではないが、商品券問題で石破氏の求心力が揺らげば、旧派閥リーダーたちの動きが一層活発化する可能性も否定できない。


試される政権

物価高に苦しむ国民の前で、高額療養費の見直しと商品券配布が重なった。石破首相は「国民にご心配をかけた」と繰り返し謝罪するが、両院での野党の追及は激化必至。仮に新年度までに予算成立に至らなければ、政権運営は窮地に陥る。政治改革を掲げて誕生した石破政権が、皮肉にも「政治とカネ」と「国民生活」でつまずく展開に、国民の目は厳しさを増している。