2025(令和7)年度の新年度予算案が、3月4日に衆議院本会議で可決された。
少数与党である自民・公明両党に加えて、日本維新の会が合意した。
修正案には教育無償化の具体策や「年収103万円の壁」の見直しに伴う税収減への対応などが盛り込まれている。政府提出の当初予算案が国会審議の過程で本格的に修正されるのは、橋本内閣以来29年ぶりとなる。
修正のポイント
修正の主眼は、少子化や人材育成への危機感を背景とした教育分野と、働く意欲をそぐとされてきた「103万円の壁」対策であった。
所得税や社会保険料負担をめぐる制度の歪みを是正する意義は大きいが、一方で税収や社会保険料収入の減少は避けられない。今回の修正では一般会計総額を当初案より約3400億円減の約115兆2000億円に圧縮した。
国会での当初予算の減額修正は極めて異例であり、経済界や各自治体にとっても大きなインパクトをもたらしている。
各党の思惑
衆議院での採決では、自民・公明両党に加えて維新の会などが賛成に回り、立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、共産党などは反対票を投じた。
最大野党を率いる立憲民主党の野田代表は、修正をもっと勝ち取りたかったと悔しさをにじませつつも、参議院での追加修正を求めていく構えを示している。
国民民主党も、ガソリン税の暫定税率を早期に廃止し、燃料価格の負担を軽減する案を主張している。
予算成立は憲法規定で決定的
予算案は既に参議院に送付され、衆議院通過から30日が経過すれば憲法の規定によって自然成立する。このため、3月末までに参議院での採決にこぎつけるか、最悪の場合でも4月2日までには成立が確定する見通しだ。
ただし、与党が少数にとどまっている現状では、これまでの衆議院審議でも見られたように、維新の会など第三極と呼ばれる勢力との協議が欠かせない。
さらに参議院では、野党側が高額療養費制度の負担上限額引き上げ凍結などを強く求めており、与党としては全面的な譲歩には慎重な姿勢を貫きつつも、一部で追加修正を行う可能性も残されている。
政局の背景
今回の修正過程には、コロナ禍後の経済回復や物価高騰などによる国民生活への影響が背景にある。
加えて、ウクライナ情勢やエネルギー価格、アメリカのトランプ政権による関税などの先行き不透明感が残るなか、早急な景気対策や物価対策を求める声もある。
そのため、当初予算成立後に追加の補正予算を編成する可能性も取り沙汰されている。
参議院では5日と6日に石破総理大臣と全閣僚出席のもと、基本的質疑を集中して行う見込みだ。
政府・与党は「政局」に流れず、あくまで国民生活の充実に向けた実質的な成果を強調していくとみられる。
一方で、野党各党は依然として批判と修正要求を強めており、参議院でどの程度合意形成が可能となるかが、今後の政局や政策運営を占う重要な試金石となるだろう。
最終的には自然成立の期限を待たずに今月末までの予算成立を目指す構えだが、修正議論の行方次第では参議院での審議が延びる可能性もある。
新年度の幕開けが迫るなか、長期化は避けたい政府・与党と、追加的な政策を勝ち取りたい野党の思惑がせめぎ合う状況である。