Tesla、“1兆ドルクラブ”陥落の背景 - Journamics

Tesla、“1兆ドルクラブ”陥落の背景

イーロン・マスク氏が率いる電気自動車大手Tesla(テスラ)の株価が難局にある。

厳しい市場環境の中で急落を続け、2025年2月25日の取引終了時点で302.80ドル、さらに2月26日の取引後は290.80ドルにまで下落した。

これにより、テスラの時価総額は2024年11月以降初めて1兆ドルの大台を下回るに至った。

world market-cap ranking
世界時価総額ランキングTop10

株価下落トレンド止まらず

テスラ株は、ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利後から堅調に上昇し、マスク氏の純資産は過去最高の3,478億ドルに達していた。

しかし、その後は需要の鈍化や企業経営への不透明感、さらには政治的な動向が影響し、株価は急落局面を迎え、時価総額は9,740億ドルにまで縮小した。


マスク氏の政治活動の影響

マスク氏の政治活動は、テスラの経営に対する不安要因として取り沙汰されている。

米国では、マスク氏が政界に深く関与するあまり、テスラ経営への集中が欠如しているとする批判もある。
またドイツ選挙における極右政党支持の発言など、政治的発言が一部市場で物議を醸し、消費者の購買意欲に影響を及ぼしているとの見方がある。

こうした政治的要素が投資家の不安を増幅させ、株価下落の一因として働いている可能性が高い。

なお、マスク氏は今年に入って520億ドル(約7兆7,000億円)分の資産を減少させたが、それでも世界一の富豪の地位を維持している。


ヨーロッパでの攻防

欧州自動車工業会ACEA:European Automobile Manufacturers’ Association)の発表によれば、今年1月のテスラの欧州での販売台数は前年同月比45%減少した。

欧州全体のEV市場が37%増加する中での減少であり、テスラの同地域における競争力低下を浮き彫りにしている。

現地では、BYDやフォルクスワーゲン、その他の欧州メーカーが新モデル投入や価格戦略を展開し、テスラは熾烈な競争にさらされている。

一方で生産に目を移すと、ギガ・ベルリンを中心に足がかりが着実に構築されつつある。

同工場におけるModel Yの生産能力は37.5万台以上とされ、2024年にはこの工場で生産されたModel Yが、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、スイス、オランダなどで最も売れる車両となった。
また、Teslaはノルウェーで4年連続で最も多く販売されるブランドとなっており、Model YとModel 3がそれぞれトップセールスを記録している。

これらの数字は、欧州市場における基盤形成が着実に進んでいることを示している。


最重要市場、中国

テスラは常に中国市場を常に生産・販売の両面で最重要拠点とみなしてきた。
最新の決算資料でも、ギガ・上海ではModel 3/Yの生産能力が95万台以上に達し、記録的な納車実績を上げた。

近日も、中国でオートパイロット・システムを導入し、技術力をアピールすることでシェア拡大を狙っている。

テスラの全体販売が下振れとなる中で、中国市場が一定の底堅さを提供している。しかし、米国においては需要の伸びが鈍化しており、さらには中国メーカーとの競争激化も背景に、テスラが従来の勢いを維持するのは容易ではない。

米中での市場環境の分断が、今後の成長戦略に大きな影響を及ぼすことは避けられない。


以上のように難局にあるテスラだが、それでも同社がEVのリーディングカンパニーであることは疑いようがない。

実際、テスラのキャッシュポジションは非常に堅調である。2024年第4四半期の時点で、キャッシュ、キャッシュ等価物、および投資額は約366億ドルに達しており、前年同期と比べても大幅に増加している。

こうした強固なキャッシュ基盤は、今後の新規工場の拡充や新技術への投資、さらには市場の不透明感に対抗するためのリスク管理において非常に重要な役割を果たす。
キャッシュフローも安定しており、テスラは今後の成長戦略や大規模投資に十分な資金を確保できる体制にある。

競争が激化する中、テスラは革新的技術とブランド力を武器に、新たな成長軌道を模索する必要がある。